お待たせしました。いちばん実用的な章です。
ここに載せているのは、何十年ものあいだ数えきれない名曲を支えてきた「効く並び」。理論の理屈はいったん忘れて、まず聴いて、気に入ったものをそのまま使ってください。そのあとで「なぜ効くのか」を読めば、自分でアレンジできるようになります。
元祖にして最強。17世紀ドイツの作曲家パッヘルベルの「カノン」で使われた8つの並びが、そのまま現代のポップスまで生き延びています。約350年、いまだに現役です。
効く理由はベースの動きにあります。分数コードを使って書き直すと、正体が見えます。
上がっていく音は「高揚」、下がっていく音は「ため息・脱力・切なさ」と結びつきます。しかも1音ずつ順番に下りるので、聴き手は次に来る音を無意識に予測できる。「予測できる」+「切ない」=安心して感動できる。これがカノン進行の必勝パターンです。
日本のポップスでいちばん使われていると言っていい進行。度数の数字をとって「4536(ヨンゴーサンロク)」とも呼ばれます。
ポイントは最後がVImで終わること。第5章で学んだ偽終止です。Iに帰りきらないので、「終わらない」感じが残り、そのままループできる。4小節をぐるぐる回すポップスと、抜群に相性がいいのです。
1990年代に小室哲哉さんが多用したことから、この通称で呼ばれています。切なく始まって、最後にパッと明るく着地するのが特徴。
最後のIを省いて3つで回す形も、現代のJ-POPでは非常に多く使われます。
ぐるぐる何周でも回れることから「循環」。1950〜60年代のポップスからジャズまで、あらゆる場所にあります。
おしゃれ進行の代表格。シティポップ、ネオソウル、R&Bの香りがする、あの響きです。日本では椎名林檎さんの楽曲名から「丸の内進行」、海外のスタンダード曲名から「Just the Two of Us 進行」という通称で呼ばれています(どちらも正式な音楽用語ではなく、愛称です)。
ハ長調のダイアトニックでは3番目は Em のはず。それを E7 に変えているのがこの進行の肝です。E7 は Am へ強く進みたがるコード(Am から見たV7)。
このように「キーの外から借りてきて、次のコードへの引力を作る」技をセカンダリードミナントといいます。次の第7章の主役です。
ジャズの基本文型。SD→D→T という機能の流れが、いちばんきれいに出る3コードです(第5章)。
世界でもっとも多く録音されたと言われる4コード。とにかく前へ進む力があり、明るく、覚えやすい。洋楽ロック、パンク、アニソン、CMソング——どこにでもあります。
ロック、ジャズ、R&B、ソウルのすべての源流。12小節で1周する決まった型があり、世界中のミュージシャンが初対面でもこれで合奏できます。
12小節目の G7 をターンアラウンドと呼びます。Iに帰らずドミナントで止めることで、ぐるっと最初に戻る力が生まれる。第5章の「半終止」の応用です。
ハ長調なのに B♭——キーの外の音が出てきます。でも不思議と、まったく違和感がありません。
これはミクソリディアンという音階(第4章で名前だけ出てきたモードの一つ)の響きです。7番目の音を半音下げると、「帰らなきゃ」という圧力が消えて、どこまでも進んでいける感じになります。
コードはほとんど変わらないのに、内側の1音だけが半音ずつ動いていく技。第2章の分数コードでも登場しました。少ない材料で、最大のドラマを作れます。
ジャズのスタンダード曲「枯葉(Autumn Leaves)」で有名な流れ。メジャーのツーファイブワン → マイナーのツーファイブワンと、2つの世界を続けて通ります。
下降ベースの発想は、いろいろな形に化けます。
気に入った進行が見つかったら、次は楽器の番です
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メールアドレスまたはLINEで、1分ほどで登録できます。| 名前 | 度数 | ハ長調では | キャラクター |
|---|---|---|---|
| カノン進行 | I V VIm IIIm IV I IV V | C G Am Em F C F G | 壮大・感動・卒業ソング |
| 王道進行(4536) | IV V IIIm VIm | F G Em Am | 切ない・盛り上がる・ループに強い |
| 小室進行(6451) | VIm IV V I | Am F G C | 疾走感・暗→明の逆転 |
| 循環コード(1625) | I VIm IIm V | C Am Dm7 G7 | 安心感・何周でも回れる |
| 丸の内進行 | IVM7 III7 VIm7 I7 | FM7 E7 Am7 C7 | おしゃれ・シティポップ・色気 |
| ツーファイブワン | IIm7 V7 IM7 | Dm7 G7 CM7 | ジャズの基本文型 |
| ポップパンク進行 | I V VIm IV | C G Am F | 明るい・前へ進む・世界最頻出 |
| 12小節ブルース | I7 IV7 V7 の型 | C7 F7 G7 | すべてのロックの源流 |
| ロック定番 | I ♭VII IV | C B♭ F | 開放的・土くさい・壮大 |
| クリシェ | I IM7 I7 IV など | C CM7 C7 F | 1音だけ動かすドラマ |
| 枯葉進行 | IIm7 V7 IM7 IVM7 IIm7♭5 V7 Im7 | Dm7 G7 CM7 FM7 Bm7-5 E7 Am7 | 明→暗・ジャズの王道 |
| 下降マイナー | Im ♭VII ♭VI V7 | Am G F E7 | 哀愁・フラメンコ・ロックバラード |
カノン進行もクリシェも、正体はベースが順番に下りているだけでした。
だから作るときも、先にベースの動きを決めてしまうのが早い。「ド→シ→ラ→ソと下ろしたい」と決めてから、その上に乗るコードを選ぶ。これだけで、それらしい進行ができます。
Dm7→G7→CM7 を見てください。ルートがレ→ソ→ドと、完全4度ずつ上がっています。この動きはもっとも自然に「次へ進んだ」と感じられるもの。
迷ったら、ルートを4度上(=5度下)へ動かす。五度圏(第4章)を反時計回りに進むのと同じことです。
同じ4コードでも、最後の1つを変えるだけで曲の設計が変わります。
ありふれたコード進行そのものは、著作物として保護されにくいと考えられています。「I→V→VIm→IV」のような並びはアイデアや素材に近く、誰かの独占を認めると音楽が作れなくなってしまうからです。実際、この記事に挙げた進行はどれも何千という曲で共有されています。
一方で、メロディ・歌詞・アレンジ・音源には当然ながら著作権があります。「進行を借りる」のは自由、「曲を借りる」のはダメ——そう覚えておけば、まず間違いありません。
※個別のケースの判断は専門家にご相談ください。ここでは一般的な考え方をご紹介しています。
ここまでは、基本的にキーの中のコードだけで作ってきました。でも【5】丸の内進行の E7 や、【9】ロック定番の B♭ のように、キーの外から借りてくるコードがすでに何度か出てきましたね。
次の第7章では、その「ハッとする響き」の正体——セカンダリードミナント、借用和音、パッシングディミニッシュ、そして転調を扱います。
気に入った進行を選んで、そこにメロディを乗せればもう作曲です。TOKYOミュージックカラー音楽教室では、「作った曲を見てほしい」「弾き語りにしたい」「バンドで演奏したい」といったご相談を歓迎しています。オンラインレッスンにも対応しています。