ここが、全12章のなかでいちばん大事な章です。
第4章で「キーが決まる」ところまで来ました。すると次に、そのキーで使えるコードが自動的に7つ決まります。この7つをダイアトニックコードといいます。
そして7つにはそれぞれ役割(機能)があります。役割が分かると、コード進行は「暗記するもの」から「自分で組み立てるもの」に変わります。
やることはとても単純です。ハ長調の7つの音(ドレミファソラシ)それぞれの上に、そのスケールの音だけを使って1つ飛ばしで3つ積む。ただそれだけ。
ドの上に積めば ド・ミ・ソ。レの上に積めば レ・ファ・ラ。ミの上なら ミ・ソ・シ……。
黒鍵は一切使いません。白鍵だけで積み上げていきます。
| 何番目 | 積んだ音 | できるコード | 性格 | 聴く |
|---|---|---|---|---|
| 1番目(ド) | ド ミ ソ | C | メジャー | |
| 2番目(レ) | レ ファ ラ | Dm | マイナー | |
| 3番目(ミ) | ミ ソ シ | Em | マイナー | |
| 4番目(ファ) | ファ ラ ド | F | メジャー | |
| 5番目(ソ) | ソ シ レ | G | メジャー | |
| 6番目(ラ) | ラ ド ミ | Am | マイナー | |
| 7番目(シ) | シ レ ファ | Bdim | ディミニッシュ |
白鍵だけで積んでいるのに、明るいコードと切ないコードが混ざりましたね。理由はミ↔ファ と シ↔ド だけが半音だから(第2章)。
この2か所の半音が、積み上げたときにどこに来るかで、長3度になったり短3度になったりする。並びの偏りが、そのままコードの性格の違いになっているのです。
ここで、とても便利な道具を導入します。コードを「何番目か」というローマ数字で呼ぶ方法です。これをディグリーネーム(度数表記)といいます。
| 度数 | I | IIm | IIIm | IV | V | VIm | VIIdim |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ハ長調(C) | C | Dm | Em | F | G | Am | Bdim |
| ト長調(G) | G | Am | Bm | C | D | Em | F♯dim |
| ヘ長調(F) | F | Gm | Am | B♭ | C | Dm | Edim |
| ニ長調(D) | D | Em | F♯m | G | A | Bm | C♯dim |
「C→G→Am→F」を I→V→VIm→IV と覚えておけば、どのキーでも同じ進行が作れます。
移調が一瞬でできる。「キーを2つ下げて」と言われても、表を見ながら置き換えるだけです。プロの現場でコード進行の話をするときは、ほぼこの言い方をします。
キーは違うのに、まったく同じ「感じ」に聞こえるのが分かります。
同じ要領で、もう1つ上まで積んで四和音にすることもできます。ポップスでもジャズでも、実際にはこちらのほうがよく使われます。
| 度数 | ハ長調 | 構成音 | キャラクター | 聴く |
|---|---|---|---|---|
| IM7 | CM7 | ド ミ ソ シ | 安定+おしゃれ。曲の始まりと終わり | |
| IIm7 | Dm7 | レ ファ ラ ド | 動き出す。Vへ向かう定番の助走 | |
| IIIm7 | Em7 | ミ ソ シ レ | ふわっと浮く。Iの代わりにもなる | |
| IVM7 | FM7 | ファ ラ ド ミ | 広がる・切なくなる。サビ前の定番 | |
| V7 | G7 | ソ シ レ ファ | 強烈に帰りたがる。7つの中で唯一のセブンス | |
| VIm7 | Am7 | ラ ド ミ ソ | やわらかく切ない。もう一つの居場所 | |
| VIIm7(♭5) | Bm7-5 | シ レ ファ ラ | 不安定。単独ではあまり使われない |
よく見てください。M7が2つ、m7が3つ、m7(♭5)が1つ。そしてVだけが、ただの「7」です。
第3章で「7=進みたい/M7=とどまる」と学びました。つまりキーの中で、進みたがるコードはVただ1つ。この事実が、この先ぜんぶの土台になります。
「7つのコード」を、実際に弾いて体に入れませんか?
ダイアトニックコードは、読んで分かった気になりやすい反面、指が覚えるまでが本番です。TOKYOミュージックカラー音楽教室では、生徒さんの好きな曲を使いながら無理なく身につけていただいています。会員アプリ「マイミュージックカラー」ならメトロノーム・チューナー・音楽辞典・音楽ゲームが無料で使えます。
メールアドレスまたはLINEで、1分ほどで登録できます。7つのコードは、働きによって3つのグループに分けられます。ここが、この章の本題です。
| 機能 | 記号 | ハ長調では | どんな感じ? |
|---|---|---|---|
| トニック 主和音 | T | C / Em / Am I・IIIm・VIm | 安定。ここが「家」です。始まりと終わりの場所。落ち着いていて、どこへでも出発できる |
| サブドミナント 下属和音 | SD | F / Dm IV・IIm | 動き出す。「外出した」状態。景色が変わって、少しふわっと広がる。まだ緊張はしていない |
| ドミナント 属和音 | D | G / G7 / Bdim V・VIIdim | 緊張。「早く家に帰りたい」状態。宙ぶらりんで落ち着かず、トニックへ強く引っぱられる |
家にいる(T)→ 出かける(SD)→ 帰り道で急ぐ(D)→ 家に着く(T)
音楽の物語は、ほぼこの往復でできています。ずっと家にいると退屈、ずっと外にいると疲れる。行って帰ってくるから気持ちいい——これが「コード進行」の正体です。
理由は2つあります。どちらも、第2章・第4章で学んだことの応用です。
G7 は ソ・シ・レ・ファ。このうちシとファの距離は、増4度=トライトーン(第2章)。音楽でいちばん落ち着かない音程です。
そして解決するときは、シ→ド(半音上へ)、ファ→ミ(半音下へ)と、外側に開くように動きます。この2つの半音がそろって動くから、着地感が圧倒的に強いのです。
スケールの7番目「シ」は、主音「ド」の半音下。半音は引力がとても強いので、シは常にドへ吸い寄せられます。この音を導音(どうおん)といいます。
第4章で「短調では7番目を半音上げる」と説明したのは、まさにこの導音を作るためでした。
7を足すだけでトライトーンが生まれ、引力が一段強くなります。サビの直前でV7を使うと、盛り上がりが増すのはこのためです。
T→SD→D→T のようなまとまりのある流れをカデンツ(終止形)といいます。文章に句読点があるように、音楽にも区切り方のパターンがあります。
ジャズでもポップスでも、いちばん耳にする2コードの組み合わせです。SD→D という自然な流れで、しかもルートがレ→ソと完全4度上がる(=完全5度下がる)ので、進行感が強い。
IIm7 → V7 → IM7 の3つ並びはツーファイブワンと呼ばれ、ジャズの基本文型です。
ここが、作曲でいちばん役に立つ考え方です。同じ機能グループの中なら、コードを入れ替えても流れは壊れません。
入れ替えられる理由は単純で、構成音が2つ共通しているからです。
| 機能 | 代表 | 代理 | 共通する音 | 入れ替えると |
|---|---|---|---|---|
| T | C ド ミ ソ | Am ラ ド ミ | ド・ミ | 安定はそのまま、少し切なくなる |
| T | C ド ミ ソ | Em ミ ソ シ | ミ・ソ | 安定はそのまま、ふわっと浮く |
| SD | F ファ ラ ド | Dm レ ファ ラ | ファ・ラ | 広がりはそのまま、しっとりする |
| D | G ソ シ レ | Bdim シ レ ファ | シ・レ | 緊張はそのまま、より不安定に |
下の3つはすべて T→SD→D→T。骨組みは同じなのに、印象がまったく違います。
これが「アレンジ」の基本動作です。メロディを変えずに、下のコードだけを差し替えて印象を変える。プロが必ずやっていることです。
丸暗記した進行は、覚えた数しか使えません。でもT→SD→D→T という骨組みと各機能の中身(T=I・IIIm・VIm/SD=IV・IIm/D=V・VIIdim)を知っていれば、組み合わせは自分で作れます。
「3×2×2×3」で、これだけでも36通り。テンションや転回形を混ぜれば、事実上無限です。
短調でもやることは同じ。そのスケールの音だけで積むだけです。イ短調(Am)でやってみましょう。
| 度数 | イ短調 | 構成音 | 機能 | 聴く |
|---|---|---|---|---|
| Im | Am | ラ ド ミ | T | |
| IIdim | Bdim | シ レ ファ | SD | |
| ♭III | C | ド ミ ソ | T | |
| IVm | Dm | レ ファ ラ | SD | |
| Vm | Em | ミ ソ シ | D | |
| ♭VI | F | ファ ラ ド | SD | |
| ♭VII | G | ソ シ レ | D |
※構成音はハ長調とまったく同じ7つ。平行調だからです(第4章)。違うのはどれを「家」と感じるかだけ。
上の表を見ると、5番目が Em になっています。マイナーコードなので、帰りたがる力が弱いのです。
そこで第4章でやったとおり、7番目のソをソ♯に上げます(和声的短音階)。すると Em(ミ・ソ・シ)が E(ミ・ソ♯・シ)に変わり、7を足せば E7。強力に Am へ帰るコードの誕生です。
これで曲は完成します。難しい理論は、ここから先は「もっと面白くするため」の話です。
骨組みが手に入りました。次の第6章では、先人たちが磨き上げてきた「効く並び」——カノン進行、王道進行、小室進行、丸の内進行——を、聴き比べながらカタログにしていきます。今日からそのまま曲作りに使える章です。
コード進行を組み立てられるようになったら、次は誰かに聴いてもらう段階です。TOKYOミュージックカラー音楽教室では、「作った曲を見てほしい」「伴奏をつけたい」といったご相談も歓迎しています。ギターもピアノも開講しており、オンラインレッスンにも対応しています。