第2章|コードの仕組み(度数と積み方)

第1章で「コードは1つ飛ばしで音を積んだもの」と説明しました。この章では、その「積み方」を正確に測るモノサシを手に入れます。
このモノサシの名前は度数(どすう)。これさえ分かれば、コードは暗記ではなく計算になります。ギターのコード表も、ピアノの押さえ方も、もう丸暗記しなくて大丈夫です。

この章がいちばん「理屈っぽい」です

正直にお伝えすると、全12章の中でここがいちばん理屈っぽいところです。でもここを越えると、あとは全部ラクになります。分からないところは飛ばして、必要になったら戻ってくる読み方でもOKです。

準備運動|半音と全音

ピアノの鍵盤を思い浮かべてください。黒鍵も白鍵もぜんぶ含めて、となり同士の音の距離が「半音」です。そして半音2つぶんが「全音」

「ド」のとなりは「ド♯(=レ♭)」で半音。そのとなりが「レ」なので、ドとレは全音。ところが「ミ」と「ファ」、「シ」と「ド」の間には黒鍵がないので、この2か所だけは白鍵どうしなのに半音です。

ここは丸ごと覚えてください

ミ↔ファ と シ↔ド だけが半音。ほかの白鍵どうしは全音。
この2か所が、このあと出てくる「明るい/暗い」も「調号(♯♭)」も、ぜんぶ生み出しています。音楽理論のほとんどは、この2か所のズレの話だと言ってもいいくらいです。

音の距離のはかり方=度数

2つの音がどれくらい離れているかを表すのが度数(音程)です。数え方はとても簡単で、自分自身を「1」として、上に数えていくだけ

「ド」から「ミ」なら、ド(1)→ レ(2)→ ミ(3)3度
「ド」から「ソ」なら、ド・レ・ミ・ファ・ソ5度

よくある間違い

「ドからレは1つ動いたから1度」——ではありません。自分を1と数えるので2度です。ここだけ、算数の感覚と食い違います。だから「3度+3度」を足しても6度にはならず、5度になります(1がダブって数えられるため)。

「完全」「長」「短」がつく理由

ただ「3度」と言っただけでは、まだ足りません。第1章で見たとおり、同じ3度でもミなのかミ♭なのかで明るさがまるで違うからです。そこで、度数の前に種類を表すことばをつけます。

結局のところ、いちばん確実なのは「半音がいくつぶん離れているか」で覚えてしまうことです。下の表が、この章のいちばん大事な表です。

半音の数名前ドから数えるとどんな響き?聴く
0完全1度同じ音(ユニゾン)
1短2度ド♯/レ♭強くぶつかる。ホラー系の定番
2長2度軽くぶつかる
3短3度ミ♭切ない。マイナーの正体
4長3度明るい。メジャーの正体
5完全4度ファ力強い。まだ落ち着かない
6増4度/減5度ファ♯/ソ♭不安。三全音(トライトーン)
7完全5度とにかく安定。コードの背骨
8短6度ラ♭やわらかく切ない
9長6度あたたかい・レトロ
10短7度シ♭次に進みたくなる。7thの正体
11長7度おしゃれ。M7の正体
12完全8度上のド同じ音に聞こえる(オクターブ)
この4つだけ覚えれば、9割いけます
  • 短3度=半音3つ(切ない)
  • 長3度=半音4つ(明るい)
  • 完全5度=半音7つ(安定)
  • 短7度=半音10つ/長7度=半音11つ(動きたい/おしゃれ)

三和音は「1度・3度・5度」を積んだもの

ここからが本番です。第1章で「1つ飛ばしで3つ積む」と言ったものは、度数でいうとルート(1度)・3度・5度を重ねたものでした。

そして3度と5度をどう選ぶかで、三和音は4種類できます。この4つがコードの原型です。

名前コードネーム構成ドから作るとキャラクター聴く
メジャー
(長三和音)
C1・長3・完全5
下が長3度+上が短3度
ド・ミ・ソ明るい・素直・安定
マイナー
(短三和音)
Cm1・短3・完全5
下が短3度+上が長3度
ド・ミ♭・ソ切ない・落ち着いた
ディミニッシュ
(減三和音)
Cdim1・短3・減5
短3度+短3度
ド・ミ♭・ソ♭不安・宙づり・ミステリー
オーギュメント
(増三和音)
Caug1・長3・増5
長3度+長3度
ド・ミ・ソ♯ふしぎ・浮遊感
4つを順番に聴いてみてください

下の3度が長いか短いか、上の3度が長いか短いか。たったこれだけの組み合わせで、4つの表情が生まれています。

ルートが変わっても、作り方はまったく同じ

たとえばD(ディー)を作りたければ、ルートは「レ」。そこから半音4つ上(=ファ♯)、さらに半音3つ上(=ラ)。はい、レ・ファ♯・ラで完成です。ギターのコード表を見なくても作れました。

Amなら、ルートは「ラ」。半音3つ上(=ド)半音4つ上(=ミ)ラ・ド・ミです。

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もう1つ積むと、四和音(7th)になる

1度・3度・5度と積んできたので、次の「1つ飛ばし」は7度です。これを足したものが四和音(セブンスコード)大人っぽい響き、おしゃれな響きの正体はほぼこれです。

コードネーム読み方土台足す7度ドから作ると聴く
C7シーセブンC(明るい)短7度(半音10)ド・ミ・ソ・シ♭
CM7シーメイジャーセブンC(明るい)長7度(半音11)ド・ミ・ソ・シ
Cm7シーマイナーセブンCm(切ない)短7度ド・ミ♭・ソ・シ♭
CmM7シーマイナーメイジャーセブンCm(切ない)長7度ド・ミ♭・ソ・シ
Cm7(♭5)シーマイナーセブンフラットファイブCdim(不安)短7度ド・ミ♭・ソ♭・シ♭
Cdim7シーディミニッシュセブンCdim(不安)減7度(半音9)ド・ミ♭・ソ♭・シ♭♭
7 と M7 の違いが、いちばん大事

同じ「7」でも、半音1つの違いで役割がまったく別物になります。

  • C7(短7度)=落ち着かない。次のコードへ行きたがる。ブルース・ジャズ・盛り上がる直前に登場
  • CM7(長7度)=落ち着いている。むしろ浮遊してとどまる。シティポップ・バラード・おしゃれな響きの定番

この「進みたがる」性質が、実はコード進行というものを生み出しているエンジンです。くわしくは第5章で。

さらに積むと、テンションになる

7度の上にもう1つ飛ばしで積むと9度、その上が11度、さらに13度。オクターブを越えて積まれたこれらの音をテンションと呼びます。

9度は「2度の1オクターブ上」、11度は「4度の1オクターブ上」、13度は「6度の1オクターブ上」。数字から7を引くと、元の度数が出ます(9−7=2、11−7=4、13−7=6)。

※テンションの使い方は第3章でまとめて扱います。ここでは「上に積み続けているだけ」と分かればOKです。

転回形|同じコードでも、並べかえていい

ここも大事なポイントです。ド・ミ・ソミ・ソ・ドソ・ド・ミに並べかえても、鳴っている音の種類は同じ。だからぜんぶCです。この並べかえを転回形(てんかいけい)といいます。

呼び方いちばん下の音並び聴く
基本形ルート(ド)ド・ミ・ソ
第1転回形3度(ミ)ミ・ソ・ド
第2転回形5度(ソ)ソ・ド・ミ

転回形は「なんとなく」ではなく、目的があります

並べかえる理由は主に2つ。①手(指)の移動を減らすためと、②となりのコードとなめらかにつなぐためです。

たとえばCからFへ移るとき。基本形どうし(ド・ミ・ソ → ファ・ラ・ド)だと手が大きく飛びます。でもFを第2転回形(ド・ファ・ラ)にすると、ドは動かないまま、ミ→ファ、ソ→ラと半音・全音動くだけで済みます。

聴き比べ:C → F

同じコード進行でも、後者のほうがずっと自然でプロっぽく聞こえます。この「音の並べ方の工夫」をボイシングといいます。

ボイシングの黄金ルール

となり合うコードで、共通する音はできるだけ動かさない。動かすときも、いちばん近い音へ動かす。
たったこれだけで、伴奏の質が一段上がります。ピアノでもギターでも合唱でも共通する、300年以上変わっていない原則です。

分数コード(オンコード)|いちばん下の音を指定する

楽譜に C/E(シー・オン・イー)や FonG(エフ・オン・ジー)という書き方が出てくることがあります。読み方はどちらも「上のコードを、下の音の上に乗せる」です。

使い方は大きく2種類あります。

①ベースラインをなめらかに動かしたいとき

これがいちばん多い用途です。コードは変わっているのに、ベースだけが階段のように下がっていく——聴いたことのある、あの切ない感じです。

②コードにない音を、あえて下に置くとき

FonGは、F(ファ・ラ・ド)の下に「ソ」を置いたもの。ソはFの構成音ではありません。この「浮いた感じ」がJ-POPのサビ前で大活躍します。

サビ前でよく聴くやつ

転回形と分数コードは、実は同じもの

C/Eは「Cの第1転回形」を文字で書いただけです。転回形=考え方、分数コード=その書き方、と思ってください。ただし②のようにコードに無い音をベースにする場合は、転回形ではありません

アルペジオ|積んだ音を、バラして弾く

コードは「同時に鳴らすもの」と説明してきましたが、1音ずつバラして順番に鳴らしてもいいのです。これをアルペジオ(分散和音)といいます。

ギターの弾き語りのポロポロした伴奏も、ピアノの左手の伴奏も、正体はアルペジオ。同じコードなのに、鳴らし方を変えるだけで曲の表情が変わります。

同じ C を、3通りで

アルペジオはコードの構成音を体で覚えるための、最強の練習方法でもあります。TOKYOミュージックカラー音楽教室では、オリジナル教材「基礎練習シリーズ【アルペジオ】」で、15の調すべてのアルペジオを練習していただいています。第9章のアドリブにも直結する練習です。

第2章のまとめ

この章で覚えたこと
  • となり同士が半音、2つぶんが全音ミ↔ファ と シ↔ド だけ白鍵どうしで半音
  • 度数は自分を1と数える。確実なのは半音の数で覚えること
  • 三和音はルート・3度・5度。組み合わせでメジャー/マイナー/dim/aug の4種類
  • 7度を足すと四和音短7度=進みたい/長7度=おしゃれ
  • 転回形で並べかえてもコードは同じ。共通音は動かさないのが基本
  • 分数コードはベース音の指定。ベースが動くだけで物語が生まれる
  • バラして弾けばアルペジオ。構成音を覚える最強の練習

ここまででコードを自分の手で組み立てる道具がそろいました。次の第3章では、C のうしろにつくいろいろな記号——m・7・M7・sus4・dim・aug・add9・6・テンション——を、ひとつずつ聴き比べながら制覇します。

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コードを実際に弾いてみたい方へ

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