第1章で「コードは1つ飛ばしで音を積んだもの」と説明しました。この章では、その「積み方」を正確に測るモノサシを手に入れます。
このモノサシの名前は度数(どすう)。これさえ分かれば、コードは暗記ではなく計算になります。ギターのコード表も、ピアノの押さえ方も、もう丸暗記しなくて大丈夫です。
正直にお伝えすると、全12章の中でここがいちばん理屈っぽいところです。でもここを越えると、あとは全部ラクになります。分からないところは飛ばして、必要になったら戻ってくる読み方でもOKです。
ピアノの鍵盤を思い浮かべてください。黒鍵も白鍵もぜんぶ含めて、となり同士の音の距離が「半音」です。そして半音2つぶんが「全音」。
「ド」のとなりは「ド♯(=レ♭)」で半音。そのとなりが「レ」なので、ドとレは全音。ところが「ミ」と「ファ」、「シ」と「ド」の間には黒鍵がないので、この2か所だけは白鍵どうしなのに半音です。
ミ↔ファ と シ↔ド だけが半音。ほかの白鍵どうしは全音。
この2か所が、このあと出てくる「明るい/暗い」も「調号(♯♭)」も、ぜんぶ生み出しています。音楽理論のほとんどは、この2か所のズレの話だと言ってもいいくらいです。
2つの音がどれくらい離れているかを表すのが度数(音程)です。数え方はとても簡単で、自分自身を「1」として、上に数えていくだけ。
「ド」から「ミ」なら、ド(1)→ レ(2)→ ミ(3)で3度。
「ド」から「ソ」なら、ド・レ・ミ・ファ・ソで5度。
「ドからレは1つ動いたから1度」——ではありません。自分を1と数えるので2度です。ここだけ、算数の感覚と食い違います。だから「3度+3度」を足しても6度にはならず、5度になります(1がダブって数えられるため)。
ただ「3度」と言っただけでは、まだ足りません。第1章で見たとおり、同じ3度でもミなのかミ♭なのかで明るさがまるで違うからです。そこで、度数の前に種類を表すことばをつけます。
結局のところ、いちばん確実なのは「半音がいくつぶん離れているか」で覚えてしまうことです。下の表が、この章のいちばん大事な表です。
| 半音の数 | 名前 | ドから数えると | どんな響き? | 聴く |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 完全1度 | ド | 同じ音(ユニゾン) | — |
| 1 | 短2度 | ド♯/レ♭ | 強くぶつかる。ホラー系の定番 | |
| 2 | 長2度 | レ | 軽くぶつかる | |
| 3 | 短3度 | ミ♭ | 切ない。マイナーの正体 | |
| 4 | 長3度 | ミ | 明るい。メジャーの正体 | |
| 5 | 完全4度 | ファ | 力強い。まだ落ち着かない | |
| 6 | 増4度/減5度 | ファ♯/ソ♭ | 不安。三全音(トライトーン) | |
| 7 | 完全5度 | ソ | とにかく安定。コードの背骨 | |
| 8 | 短6度 | ラ♭ | やわらかく切ない | |
| 9 | 長6度 | ラ | あたたかい・レトロ | |
| 10 | 短7度 | シ♭ | 次に進みたくなる。7thの正体 | |
| 11 | 長7度 | シ | おしゃれ。M7の正体 | |
| 12 | 完全8度 | 上のド | 同じ音に聞こえる(オクターブ) |
ここからが本番です。第1章で「1つ飛ばしで3つ積む」と言ったものは、度数でいうとルート(1度)・3度・5度を重ねたものでした。
そして3度と5度をどう選ぶかで、三和音は4種類できます。この4つがコードの原型です。
| 名前 | コードネーム | 構成 | ドから作ると | キャラクター | 聴く |
|---|---|---|---|---|---|
| メジャー (長三和音) | C | 1・長3・完全5 下が長3度+上が短3度 | ド・ミ・ソ | 明るい・素直・安定 | |
| マイナー (短三和音) | Cm | 1・短3・完全5 下が短3度+上が長3度 | ド・ミ♭・ソ | 切ない・落ち着いた | |
| ディミニッシュ (減三和音) | Cdim | 1・短3・減5 短3度+短3度 | ド・ミ♭・ソ♭ | 不安・宙づり・ミステリー | |
| オーギュメント (増三和音) | Caug | 1・長3・増5 長3度+長3度 | ド・ミ・ソ♯ | ふしぎ・浮遊感 |
下の3度が長いか短いか、上の3度が長いか短いか。たったこれだけの組み合わせで、4つの表情が生まれています。
たとえばD(ディー)を作りたければ、ルートは「レ」。そこから半音4つ上(=ファ♯)、さらに半音3つ上(=ラ)。はい、レ・ファ♯・ラで完成です。ギターのコード表を見なくても作れました。
Amなら、ルートは「ラ」。半音3つ上(=ド)、半音4つ上(=ミ)。ラ・ド・ミです。
度数は「目」より「耳」で覚えるほうが、ずっと速いです
会員アプリ「マイミュージックカラー」には、音あてゲームや音程あてゲームが入っています。半音3つと半音4つの違いを、遊びながら耳に入れてしまうのが最短ルート。チューナー・メトロノーム・音楽辞典も無料で使えます。
メールアドレスまたはLINEで、1分ほどで登録できます。1度・3度・5度と積んできたので、次の「1つ飛ばし」は7度です。これを足したものが四和音(セブンスコード)。大人っぽい響き、おしゃれな響きの正体はほぼこれです。
| コードネーム | 読み方 | 土台 | 足す7度 | ドから作ると | 聴く |
|---|---|---|---|---|---|
| C7 | シーセブン | C(明るい) | 短7度(半音10) | ド・ミ・ソ・シ♭ | |
| CM7 | シーメイジャーセブン | C(明るい) | 長7度(半音11) | ド・ミ・ソ・シ | |
| Cm7 | シーマイナーセブン | Cm(切ない) | 短7度 | ド・ミ♭・ソ・シ♭ | |
| CmM7 | シーマイナーメイジャーセブン | Cm(切ない) | 長7度 | ド・ミ♭・ソ・シ | |
| Cm7(♭5) | シーマイナーセブンフラットファイブ | Cdim(不安) | 短7度 | ド・ミ♭・ソ♭・シ♭ | |
| Cdim7 | シーディミニッシュセブン | Cdim(不安) | 減7度(半音9) | ド・ミ♭・ソ♭・シ♭♭ |
同じ「7」でも、半音1つの違いで役割がまったく別物になります。
この「進みたがる」性質が、実はコード進行というものを生み出しているエンジンです。くわしくは第5章で。
7度の上にもう1つ飛ばしで積むと9度、その上が11度、さらに13度。オクターブを越えて積まれたこれらの音をテンションと呼びます。
9度は「2度の1オクターブ上」、11度は「4度の1オクターブ上」、13度は「6度の1オクターブ上」。数字から7を引くと、元の度数が出ます(9−7=2、11−7=4、13−7=6)。
※テンションの使い方は第3章でまとめて扱います。ここでは「上に積み続けているだけ」と分かればOKです。
ここも大事なポイントです。ド・ミ・ソをミ・ソ・ドやソ・ド・ミに並べかえても、鳴っている音の種類は同じ。だからぜんぶCです。この並べかえを転回形(てんかいけい)といいます。
| 呼び方 | いちばん下の音 | 並び | 聴く |
|---|---|---|---|
| 基本形 | ルート(ド) | ド・ミ・ソ | |
| 第1転回形 | 3度(ミ) | ミ・ソ・ド | |
| 第2転回形 | 5度(ソ) | ソ・ド・ミ |
並べかえる理由は主に2つ。①手(指)の移動を減らすためと、②となりのコードとなめらかにつなぐためです。
たとえばCからFへ移るとき。基本形どうし(ド・ミ・ソ → ファ・ラ・ド)だと手が大きく飛びます。でもFを第2転回形(ド・ファ・ラ)にすると、ドは動かないまま、ミ→ファ、ソ→ラと半音・全音動くだけで済みます。
同じコード進行でも、後者のほうがずっと自然でプロっぽく聞こえます。この「音の並べ方の工夫」をボイシングといいます。
となり合うコードで、共通する音はできるだけ動かさない。動かすときも、いちばん近い音へ動かす。
たったこれだけで、伴奏の質が一段上がります。ピアノでもギターでも合唱でも共通する、300年以上変わっていない原則です。
楽譜に C/E(シー・オン・イー)や FonG(エフ・オン・ジー)という書き方が出てくることがあります。読み方はどちらも「上のコードを、下の音の上に乗せる」です。
使い方は大きく2種類あります。
これがいちばん多い用途です。コードは変わっているのに、ベースだけが階段のように下がっていく——聴いたことのある、あの切ない感じです。
FonGは、F(ファ・ラ・ド)の下に「ソ」を置いたもの。ソはFの構成音ではありません。この「浮いた感じ」がJ-POPのサビ前で大活躍します。
C/Eは「Cの第1転回形」を文字で書いただけです。転回形=考え方、分数コード=その書き方、と思ってください。ただし②のようにコードに無い音をベースにする場合は、転回形ではありません。
コードは「同時に鳴らすもの」と説明してきましたが、1音ずつバラして順番に鳴らしてもいいのです。これをアルペジオ(分散和音)といいます。
ギターの弾き語りのポロポロした伴奏も、ピアノの左手の伴奏も、正体はアルペジオ。同じコードなのに、鳴らし方を変えるだけで曲の表情が変わります。
アルペジオはコードの構成音を体で覚えるための、最強の練習方法でもあります。TOKYOミュージックカラー音楽教室では、オリジナル教材「基礎練習シリーズ【アルペジオ】」で、15の調すべてのアルペジオを練習していただいています。第9章のアドリブにも直結する練習です。
ここまででコードを自分の手で組み立てる道具がそろいました。次の第3章では、C のうしろにつくいろいろな記号——m・7・M7・sus4・dim・aug・add9・6・テンション——を、ひとつずつ聴き比べながら制覇します。
度数も転回形も、楽器で鳴らした瞬間に「あ、こういうことか」に変わります。TOKYOミュージックカラー音楽教室では、ギターもピアノも開講しています。「コードだけ習いたい」「作った曲を見てほしい」というご相談も歓迎です。オンラインレッスンにも対応しています。